【夏休みの個人研究】国語の教科書の間違い。

 『方丈記』の作者は? 「鴨長明」と答えるのが常識だろうが、実はその常識は間違っている。

 『方丈記』の作者は誰か? 答えは「蓮胤」である。国語のテストの解答として、正解の「○」をくれる国語の先生はいるだろうか?

 『方丈記』の跋文に、「時に建暦の二年とせ、三月やよひの晦日つごもりごろ、桑門蓮胤、外山の庵にしてこれをしるす。」とある。 「桑門」とは《(梵)śramaṇaの訳》出家して修行する人。僧侶。沙門(しゃもん)という意味である。「桑門蓮胤」と自称し、しかも、「外山の庵にしてこれをしるす。」と、はっきりと『方丈記』に記されている。ところが、国語の教科書には、『方丈記』の作者は、「鴨長明」と書かれている。有名な、最澄も、空海も、鎌倉新仏教の法然、親鸞、栄西、道元、日蓮にしても、出家名での表記が一般的で、わざわざ、出家前の名前で呼ばれたりしない。なぜ何故に、出家した人間を、敢えて出家前の名前で表記し続けるのか。これは、出家者に対する冒涜ではないかと思う。はっきりと、「桑門(出家者)蓮胤」「これをしるす。」とあるのに、何故に、作者を「(俗人)鴨長明」と、暗記させるのか。お坊さんに「俗名」で、呼びかける失礼を想像してみれば良い。これは、非常識といもの。蓮胤の作品とされている『方丈記』『無名抄』『発心集』は、いずれも出家後に成立している。常識的に見ても、作者名は「蓮胤」であろう。何故に、蓮胤のみが出家者でありながら辱めを受け続けるのか、受け続けなければならないのか。

 『方丈記』は、国語の先生ならば誰でも知っているし、読んだことがあろうが、誰でも『方丈記』の冒頭は知っていても、実は最後まで読んでいる、知っている国語の先生は少ないものである。試しに、このブログを読んだ受験生は、是非、国語の先生に「方丈記の作者は誰か?」と、尋ねてみると良いだろう。『方丈記』を読んだことのない国語の先生は、ことごとく「作者鴨長明」と答えるはずである。もちろん、『方丈記』を最後まで読んでいないので、「跋文」の「時に建暦の二年とせ、三月やよひの晦日つごもりごろ、桑門蓮胤、外山の庵にしてこれをしるす。」とあることを知らないのである。《教科書の間違い①》

 作者「蓮胤」自ら「桑門」と書いてあるように、『方丈記』は「随筆文学」の範疇でなく、僧侶が書いた「法語文学」に含まれるべきであろう。「法語文学」とは、法然の『選択本願念仏集』、道元の『正法眼蔵』や親鸞の『歎異抄』のような、僧侶が書いた「文学」のことを言う。多くの人が、「名文」故に『方丈記』を、国語の時間に暗唱させられた経験を持っていると思うが、『方丈記』が流れるような「名文」であるが故に、「法語文学」であると理解されなかったようだ。
 しかし、『方丈記』。冒頭の部分を読んだだけでも、1)『徒然草』の冒頭のような「つれづれなるままに、日暮らし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書き」つけたものではないことに気づく。そして更に、2)『方丈記』は、統一について未だ解明されていない「枕草子」とは違い、論理的構成がはっきりとしており、最後まで一貫した「起承転結」を見てとれる。もちろん、類従的章段、日記(回想)的章段、随想的章段などという章段構成を、『方丈記』から見ることが出来ない。何処をどう見たら、『方丈記』は「随筆」と言えるのだろうか? 『方丈記』は「随筆」なのか? 「随筆」でないのか?
 ところが、世の中、『方丈記』が「随筆」であるかどうかさえ、わかっていない教師が多いものだ。なぜ、『方丈記』は「随筆」なのか? 国語の教師に聞いてみよう。きちんと『方丈記』が「随筆」だと答えられる「教師」はいるまい。きまって「教科書に書いてあるから」と逃げるはずだ。教科書に書いてあるから、だからそれが正しい?? 本当だろうか? それで納得できるだろうか? 本当に『方丈記』は「随筆」なのだろうか?? 自分の頭で考えてみよう。「真実は常に一つだ」、byコナン。《教科書の間違い②③》

 『方丈記』が「随筆」でないとなると、国語の教師の言う、「三大随筆」は、おかしくないか?  目の前に、岩波文庫の『枕草子』『方丈記』『徒然草』の三冊を並べて置いて見れば、この中で一冊だけ「異質」なのがすぐ分かる。
 小学生だって一冊だけ「違うこと」に気づくのに、世の、国語の教師は『方丈記』は「随筆」だと言い、「三大随筆」を覚えろと言う。ところが、『枕草子』は「草子」である。『徒然草 』は「草(草子)」である。それに対して、『方丈記』は「記」である。書名、名称は、作者名同様疎かにしてはいけないものである。この「草子(草)」と「記」の書名の違いについて、きちんと理解している国語教師は少ない。『方丈記』は「随筆」ではないと、疑問に気づいた生徒は、近くの国語教師に尋ねて見るとよい。「草(子)」と「記」の違いを理解していて、明確にその違いを説明してくれる国語教師は少ないものである。勿論、この違いが分かっていない教師は、決まって『方丈記』を「随筆」といい、「三大随筆」と覚えろと、理由も分かっていなくても「受験の知識」を注入してくれるはずだ。《教科書の間違い④》

 整理すると、

 ①『方丈記』の作者は、「鴨長明」ではない。
 ②『方丈記』は、「随筆」ではない。
 ③『方丈記』が「随筆文学」でない以上、当然、『方丈記』の作者は「随筆家」ではない。
  『方丈記』の作者はが「随筆家」であるとしたら、『方丈記』の作者は「エッセイスト」だと勘違いされてしまう。
  特に、外国語で「エッセイスト」だと理解されてしまうと、日本文学の誤った理解が拡散されてしまう。
 ④「二大随筆」は説明できても、「三大随筆」という括り方はできない。

 以上、国語の教科書の間違い。

 国語の教師できちんと生徒の質問に答えられる教師は何人いるだろうか。得てして、教師というものは、偉そうにしているが「不勉強な者」が多いものである。心ある生徒は、是非、国語の教師に質問して「教科書の間違い」を正して欲しいものである。それ以上に、文科省の「教科書検定」自体、いい加減なものである。誤った事実を、再生産させ続けている。

           《 『方丈記』関連記事 》

1)「方丈記」の作者は? https://kiyosige.at.webry.info/201102/article_15.html
2)学問の停滞、消える学問「国文学」   http://kiyosige.at.webry.info/201306/article_3.html
3)方丈記について、最近考えていること。  http://kiyosige.at.webry.info/201701/article_1.html
4)『方丈記』はつまらぬ駄文なのか (大槻義彦元早稲田大学教授のブログから)
                           http://kiyosige.at.webry.info/201307/article_3.html 
5)『方丈記』は「随筆」なのか?       http://kiyosige.at.webry.info/201701/article_5.html
6)『方丈記』は「随筆」ではない。      http://kiyosige.at.webry.info/200901/article_2.html 
7)「三大随筆」                 http://kiyosige.at.webry.info/201002/article_1.html 
8)昭和の時代の受験の知識「三大随筆」の誤りを正す。 https://kiyosige.at.webry.info/201909/article_1.html
9)方丈記の「無常観」について       http://kiyosige.at.webry.info/201605/article_6.html

10)随筆『徒然草』の作者は?         http://kiyosige.at.webry.info/201802/article_5.html

■蓮胤の「方丈記」論_関係記事一覧 https://kiyosige.at.webry.info/201909/article_8.html

 

            《 参考文献 》

1)方丈記―付発心集(抄) 現代語訳対照 (1981年) (旺文社文庫) https://www.amazon.co.jp/%E6%96%B9%E4%B8%88%E8%A8%98%E2%80%95%E4%BB%98%E7%99%BA%E5%BF%83%E9%9B%86-%E6%8A%84-%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E8%AA%9E%E8%A8%B3%E5%AF%BE%E7%85%A7-1981%E5%B9%B4-%E6%97%BA%E6%96%87%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB/dp/B000J80OLS/ref=sr_1_20?s=books&ie=UTF8&qid=1509421751&sr=1-20&keywords=%E6%96%B9%E4%B8%88%E8%A8%98+%E6%96%87%E5%BA%AB
2)『方丈記』と仏教思想 Kindle版 https://www.amazon.co.jp/%E6%96%B9%E4%B8%88%E8%A8%98-%E3%81%A8%E4%BB%8F%E6%95%99%E6%80%9D%E6%83%B3-%E4%BB%8A%E6%88%90%E5%85%83%E6%98%AD-ebook/dp/B00PMD0MVW/ref=tmm_kin_swatch_0?_encoding=UTF8&qid=1509422155&sr=1-15    

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